歩きスマホ:日本で静かに嫌われ続けている行為

画面を見ながら歩く「歩きスマホ」は、日本の駅で周りをいらだたせる手っ取り早い方法のひとつです。そのうえ、自転車やサラリーマンのかばん、ホームの端にぶつかりやすくなる、最も危ない行動でもあります。

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混雑した駅のコンコースをうつむいたまま歩く

混雑した新宿駅のコンコースをうつむいてスマホを見ながら歩く旅行者を、通勤客が明らかに避けて通っている
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新宿や渋谷で、Googleマップを見つめたまま人波に流されていく

東京の大きな駅のコンコース(新宿・渋谷・東京)は、速いスピードで流れる人の川です。周りの人はみんな、案内表示を見て、人の流れを読み、ぶつからないように少しずつ進路を調整しています。そこで画面に目を落とした瞬間、あなたは止まりかけの、動きの読めない障害物になり、みんながよけて通らなければならない存在になります。地元の人はすぐに気づきます。歩くペースが落ちる、本人の気づかないうちに横へずれていく、そして何より、十年以上ポスターで注意され続けてきた「あの人」そのものだからです。「歩きスマホ」という言葉が誰でも知っている言葉になったのは、まさにこの光景があるからです。

駅のコンコースの柱の脇に寄って立ち止まり、通勤客が流れていく横でスマホを確認している旅行者
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壁際に寄り、しっかり立ち止まってから画面を見る

駅の中で道を確かめたくなったら、柱や壁ぎわのスペースを見つけて人の流れから完全に外れ、壁のほうを向くか壁に沿って立ってから画面を見ましょう。コンコースの真ん中で立ち止まるのは、歩きながら見るよりもっと迷惑です。壁際で10秒あれば、誰の邪魔もせずに方向を確かめられます。本当に迷ってしまったら、人の流れの中で何とかしようとせず、改札を出て落ち着いた場所で仕切り直しましょう。📱

階段やエスカレーターで画面をスクロールする

東京の駅のエスカレーターでスマホを見下ろし、もう片方の手を軽く手すりに置いた旅行者。降り口のすぐ先で人が止まっていることに気づいていない
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エスカレーターでメッセージを読む、さらには階段を上りながら見る

エスカレーターや階段は、歩きスマホが本当に転倒・転落の危険に変わる場所です。画面を見下ろしていると乗り口や降り口の境目が見えず、前の人が急に立ち止まったとき(日本の駅ではよくあります)そのままぶつかってしまいます。そこに、いま変わりつつあるエスカレーターのルールも重なります。日本では長く「東京は左に立ち、大阪は右に立って、反対側を歩く人のために空ける」という習慣がありましたが、埼玉県(2021年)と名古屋市(2023年)は、どちらも両側とも立ち止まって乗るよう求める条例を定めました。日本エレベーター協会の2024年度の調査では、回答者の約9割がエスカレーターを歩くのはやめるべきだと答えています。手にはスマホ、しかも歩くか立つかのルールもはっきりしない。これでは、いつぶつかってもおかしくありません。

片手を手すりに置き、スマホをポケットにしまってエスカレーターに立ち止まっている旅行者
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スマホはポケットに。両足で立ち、手すりにつかまる

エスカレーターでは立ち止まり、手すりにつかまって、スマホはしまっておきましょう。東京の左側(大阪の右側)が空いているように見えても、歩いてはいけません。埼玉県や名古屋市、消費者庁がいま呼びかけているのは、両側とも「歩かずに立ち止まる」ことです。階段では顔を上げて段の端を見て、片手は空けておきましょう。スマホの用事は、次の踊り場に着くまでの20秒くらい待てます。

人混みの真ん中で急に立ち止まってスマホを見る

混雑した商店街の真ん中で突然立ち止まってスマホを見つめる旅行者。後ろの買い物客が衝突しかけている
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竹下通りやホームの真ん中で、地図を見ようと急に立ち止まる

これは普通の歩きスマホより気づかれにくく、しかも結果はたいていもっと悪くなります。迷ったと気づいて、その場で……止まる。竹下通りの真ん中で。黄色い線の近くのホームの真ん中で。階段の出口を上りきったところで。後ろの人は、皮肉なことに自分もスマホを見ていて、あなたの背中にそのままぶつかります。ホームでこれをやるのは本当に危険です。東京消防庁は、ホームから線路への転落を含め、歩きスマホに関連する転落を長年記録しています。ルールは「止まるな」ではなく、「ぶつかられる場所で止まるな」です。

混雑した通りで店の壁際に一歩よけてから立ち止まり、スマホを確認する旅行者
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止まる前に脇へ寄る。車の運転と同じ

歩道は道路だと思ってください。立ち止まって画面を見たいときは、まず小さく横に一歩ずれて合図し、壁やショーウィンドウ、柱に体を寄せてから見ましょう。黄色い線の近くのホームの真ん中では、決して立ち止まらないこと。線の内側に下がるか、柱のところまで移動します。階段の上り口や降り口でも止まらない。改札を出てすぐの場所でも止まらない。「一歩よけてから止まる」を守るだけで、日本の公共の場での振る舞いはいちばん大きく変わります。

ぶつかったあとの謝り方を間違える

通勤客にぶつかった旅行者が大げさな身振りで長い英語の謝罪を続け、相手は困った顔でその場を離れようとしている
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ぶつかっても何も言わない、あるいは英語で30秒も謝り続ける

歩きスマホでの接触は、気をつけている人にも起こります。それをこじらせるパターンは二つ。ひとつは、何も言わずにそのまま歩き去ること。二度と会わない者同士でも、これはとても失礼に映ります。もうひとつは、英語で長々と謝りながら、両手を上げて「本当にごめんなさい!」と欧米流の大きな身振りで過剰に反応すること。どちらも悪目立ちします。ぶつかった相手が求めているのは、ちょっとしたお決まりのひと言と、そのままいつもの一日に戻ることで、大げさな芝居ではありません。

混雑した歩道で軽く肩がぶつかったあと、15度ほどの会釈をして短く謝り、そのまま歩き出す旅行者
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「すみません」と軽く会釈して、そのまま進む

作法は短く、誰にでも通じます。「すみません」と言い、15度くらいの軽い会釈をして(腰から深く折るお辞儀はかしこまった場面用です)、そのまま進む。全部で2秒です。すれ違いざまに触れたり肩がぶつかったりした程度なら、謝罪はこれで十分です。相手にけがをさせたり、持ち物を落とさせたりしたときは、立ち止まって拾い、少し深めに頭を下げて「大丈夫ですか?」と声をかけましょう。それでも、ちょっとぶつかった程度なら、たいていは「すみません」と軽い会釈だけで済みます。

歩きスマホがいつまでも嫌われ続ける理由

日本では十年以上にわたって、歩きスマホをやめようという啓発キャンペーンやポスター、駅のアナウンスが続いてきました。この言葉は誰もが知っています。鉄道会社と携帯電話会社は「やめましょう、歩きスマホ。」という合言葉で共同キャンペーンを行ってきました。それでも東京消防庁は、衝突、ホームからの転落、階段からの転落など、歩きスマホがらみの事故による救急搬送を、いまも毎年数十件記録しています。

それでも嫌われ続けるのは、日本の公共の場がみんながお互いを見ながら動きを合わせることで成り立っているからです。駅の入口に交通整理の係員がいなくても回るのは、200人の通勤客がすでにお互いを見ながら自然と流れを作っているからです。歩きスマホの人は、その仕組みに穴を開けてしまいます。スピードも読めない、進む方向も読めない、目も合わない。一人がやるだけで、周りのみんなが合わせなければならなくなるのです。

大和市の条例 — 罰則ではなく、意識づけのため

2020年6月、神奈川県大和市が全国で初めて歩きスマホを防ぐ条例を定め、7月1日に施行しました。屋外の公共の場でスマートフォンを操作するときは立ち止まって行い、ほかの歩行者の通行を妨げないように、という内容です。

旅行者が知っておきたいポイントは次のとおりです。

  • 罰金はありません。 この条例は意識を高めるためのもので、罰則はありません。日本のどこにも、歩きスマホで反則切符を切られるような決まりはありません。
  • その後、ほかの自治体もいくつか続きました。 東京都足立区や大阪府池田市などで、こちらも罰則はありません。
  • 実際の問題から始まりました。 条例の直前に市が数えたところ、大和市の主な駅の周辺では、歩行者の約12%が歩きながらスマホを操作していました。条例は、罰則ではなく周りの目によってこれを変えることをめざしています。

逮捕されることはありません。それでも、伝わってくるメッセージははっきりしています。画面を見たいなら、歩くのをやめましょう。

エスカレーターのルールは変わりつつある — 歩かずに立ち止まる

久しぶりに日本を訪れた人ほど驚くのがこれです。「東京は左、大阪は右に立ち、空いている側を歩く」という昔ながらの習慣をやめようと行政が呼びかけています。ただし、いまも多くの人がこの習慣に従っています。

  • 埼玉県が2021年3月、全国で初めてエスカレーターを歩かないよう求める条例を定めました(同年10月施行)。罰則はありません。
  • 名古屋市も2023年10月に続きました。こちらも罰則はありません。キャンペーン期間中は、ボランティアの「なごやか立ち止まり隊」がエスカレーターに乗って、立ち止まって乗る手本を見せています。
  • 消費者庁も、エスカレーターを歩かないよう公式に呼びかけています。
  • 日本エレベーター協会の2024年度の調査では、回答者の90.2%が、エスカレーターを歩くのはやめるべきだと答えました。

実際のところ、日本のエスカレーターでは上りでも下りでも歩かず、乗っている間はスマホを見ないこと。手すりにつかまり、両足で立ち、画面はしまっておきましょう。

ぶつかったときの謝り方 早見表

  • すれ違いざまに触れた、軽く肩が当たった:「すみません」+15度の会釈。2秒で終わりです。
  • 強くぶつかった、持ち物を落とさせた:立ち止まって落ちたものを拾い、「すみません」と言って少し深めに頭を下げ、「大丈夫ですか?」と声をかけます。
  • けがをさせてしまった:その場にとどまって手を貸し、必要なら駅員が来るのを待つか、交番を探しましょう。

日本の人づきあいでいちばん避けたいのは、ことを大きくすることです。長い英語の謝罪、大げさな身振り、どちらが悪いかの言い合い。短く、誠実に謝って、先へ進む。これがすべてです。

クイズで確認

歩きスマホとその周りのルールを、3問で確かめてみましょう。

Quick check

Can you spot the right move?

  1. Q1 混雑した新宿のコンコースを、うつむいてスマホを見ながら歩いてもいい?

  2. Q2 エスカレーターは片側を歩かず、両側とも立ち止まって乗るべき?

  3. Q3 歩道で軽く肩がぶつかったあと、身振りを交えて英語で長々と謝るのが正解?