エレベーターの暗黙ルール — ボタン係は誰?

日本のエレベーターでは、ボタンのいちばん近くに立った人が自然と「ボタン係」になります。ドアを押さえ、行き先の階を押し、閉ボタンを担当する。その流れをひととおり解説します。

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操作パネルの横にいるのに何もしない

観光客がスマホを見ながらエレベーターの操作パネルの横に立っており、別の乗客が身を乗り出してボタンを押している
NG

ボタンのすぐ横に立っているのに、何もしない

先に乗り込んで自分の階のボタンを押し、そのままパネルの横に立つ。ほかの人が次々に乗ってくる。ドアがなんとなく長めに開いたまま。そのうち誰かが少し遠慮がちにあなたの前に手を伸ばし、本来あなたが押すはずだった閉ボタンを押す。誰も何も言いませんが、周りは気づいています。日本では、パネルのいちばん近くに立つ人には、ちょっとした暗黙の役目があるのです。

旅行者が日本のオフィスビルのエレベーターで操作パネルの横に立ち、他の乗客が降りるときに開ボタンを押し続けている
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役目を引き受ける。今はあなたがボタン係です

パネルのいちばん近くにいるなら、このエレベーターを動かすのはあなたです。「何階ですか?」と聞くか、相手が指さす階を見て押してあげましょう。全員が乗り込んだら閉ボタン(「閉」、矢印が向かい合っているマーク)を押します。自分の階より手前で止まったら、降りる人が出るまで開ボタン(「開」、矢印が外向きのマーク)を押さえておきます。10秒ほどのちょっとした作法ですが、周りの人にありがたく思われる、小さな親切です。

乗ろうとしている人がいるのに閉ボタンを押す

エレベーターのドアが急いで乗ろうとしている人の目の前で閉まっており、中の乗客が閉ボタンの近くに手を置いてぎこちなくしている
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最後の人が乗る前に閉ボタンを押してしまう

ドアが閉まりかけていて、まだ数歩先に乗ろうとしている人がいる。それなのに、そのまま閉まるに任せる。もっと悪いのは、閉ボタンを押して早く閉めてしまうことです。日本では、閉ボタンは全員が乗り込んだあとに押すもので、人を締め出すためのものではありません。こんなふうに目の前でドアを閉めるのは、思いやりのない行動だと受け取られます。それに、乗り込もうとしている人がいるのに閉ボタンを押すのは危険でもあります。

親切な乗客が日本のエレベーターで開ボタンに指を置いてドアを押さえており、ショッピングバッグを持った女性が感謝の小さなお辞儀をしながら乗り込んでいる
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ドアを押さえて待つ。開ボタンを味方に

エレベーターに向かってくる人がそれほど遠くないところにいるなら、その人が乗り込むまで開ボタンを押しておきましょう。手ではなくボタンを使うこと。エレベーターの事故はドアのところで起きることが多いからです。閉ボタンを押すのはそのあとです。ただし、エレベーターがもう満員で、その人が次のエレベーターを待つことになる場合は、申し訳なさそうに軽く会釈するだけでかまいません。それでも、基本は待つことです。

エレベーターで大声で話したり、電話したりする

二人の観光客が静かな日本のホテルのエレベーターで大声で笑いながら電話をしており、他の乗客が正面を見て少し居心地悪そうにしている
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1階から9階まで、普段どおりの大声で話し続ける

話しながら乗り込み、外にいたときと同じ声の大きさでそのまま話し続ける。電話に出てしまうこともあるかもしれません。日本のエレベーターは、特にオフィスやホテル、デパートでは静かなことが多いです。ドアが閉まったとたん、いちばん声の大きい人に、中にいる全員の意識が向いてしまいます。注意されるほどのことではありませんが、みんなが聞こえないふりをする、なんとも気まずい空気が流れます。

旅行者が日本のエレベーターで同行者と静かに話しており、スマホはしまわれていて穏やかで丁寧な雰囲気
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声を小さくするか、20秒だけ静かにする

話の途中でぴたりと黙る必要はありません。声の大きさを半分にするだけで十分です。電話中なら、エレベーターに乗る前に切り上げるか、いったん待ってもらいましょう(電車の中と同じ考え方です)。20秒ほど静かにしていれば、降りたロビーでまた普通に話せます。難しいことではありません。

混んだエレベーターで違う方向を向く

混雑した日本のエレベーターの中で観光客が後ろや横を向いており、他の全乗客が正面のドアを向いている、微妙な気まずさ
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横向きや後ろ向きで立つ

乗り込んだあと奥の壁のほうを向いたまま、あるいは友達と話しながら横を向いて立っている。日本では、エレベーターの中ではたいていドアのほうを向きます。混んだエレベーターで内側を向くと、知らない人と30センチの距離で顔を突き合わせることになり、想像どおり気まずいものです。失礼というほどではありませんが、慣れていない人だとすぐにわかってしまいます。

旅行者が日本のエレベーターで他の全乗客と同じようにドアを向いて立ち、整然と落ち着いた雰囲気
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ほかの人と同じように、ドアのほうを向く

ドアが閉まるときに、ドアのほうへ向き直りましょう。体を前に向け、視線も前へ。余裕があれば、隣の人と少し間をあけます。ぎゅうぎゅうで体の向きを変えられないときは、無理をする必要はありませんが、向きを変えようとする気持ちは見せましょう。手間はかからないのに、その場になじむ助けになります。

エレベーターは小さな村。乗っている全員に役目がある

日本のエレベーターのマナーは、実はエレベーターだけの話ではありません。日本の日常の多くの場面に通じる感覚の話です。やるべきことに気づいたら、言われる前にさっとやり、大げさにしない。 パネルの横にいる人がボタンを押すのは、壁にルールが書いてあるからではありません。たまたまいちばん手を貸しやすい場所にいて、手を貸すのが当たり前だと思っているからです。

旅行者にとってうれしいのは、どれも失敗して困るようなことではない、という点です。うまくできなくても、たぶん誰も何も言いません。でも、うまくできると、多くの旅行者が気づかない流れにすっと溶け込めたような、ささやかで温かい手応えを感じられます。中でもボタン係の役目は、気軽にできる小さな親切です。「何階ですか?」と聞いて、ほかの人の階のボタンを押すのは、まさに日本のマナーの案内がすすめていることです。

ひとことで言えば:パネルの横にいたら、あなたが担当。降りる人のために開ボタンを押さえ、閉ボタンは全員が乗ってから。そしてドアのほうを向いて立つ。

知っておくと役立つこと

  • エレベーターガール — 各階の案内をし、エレベーターを操作する制服姿の案内係は、かつてはデパートの定番でしたが、今ではほとんど残っていません。日本橋高島屋は、今もそれが見られる場所のひとつです。本館の正面エレベーターは、今も案内係が手で操作しています。
  • 閉ボタンはよく使われる — 欧米のエレベーターの閉ボタンは押しても効かない「飾り」だ(多くは決まった待ち時間が過ぎるまで閉まらない)、という話を聞いたことがあるかもしれません。日本では、閉ボタンはしょっちゅう使われていて、毎回のごく普通の操作の一部です。タイミングさえ合っていれば、遠慮なく押しましょう。
  • 開ボタンは押している間ずっと開いている — 押し続けていれば、ドアは開いたままです。荷物を持った人がゆっくり降りるときや、グループがまだ乗り込んでいる途中のときに役立ちます。
  • 病院や役所 — 表示がなくても、お年寄りや体の不自由な方を優先するのが思いやりです。スペースが必要そうな方がいたら、自分は降りて次のエレベーターを待ちましょう。ささやかな心配りです。
  • カードキー式のホテルのエレベーター — 日本のホテルの中には、ルームキーをかざさないと客室階のボタンが反応しないところがあります。あなたがボタン係で、ほかの宿泊客が自分の階に行きたい場合は、その人が先に自分のカードをかざす必要があるかもしれません。押しても反応しなくても、慌てなくて大丈夫です。

クイズで確認

ボタン係の動きが身についたか、3問で確かめてみましょう。

Quick check

Can you spot the right move?

  1. Q1 日本では、操作パネルのいちばん近くにいる人が、ほかの人の階を押したりドアを操作したりするもの?

  2. Q2 乗ろうとしている人がいるのに、急いで閉ボタンを押すのは失礼?

  3. Q3 エレベーターの中では、基本的にほかの乗客ではなくドアのほうを向くべき?