歌舞伎はにぎやか。でも思っているのとは違う意味で
初めての人はたいてい、堅苦しくて美術館みたいに静かな場を想像して身構えてやってきて、その逆に出くわします。歌舞伎は大胆です。ぶつかり合う色彩、客席を切り裂く太鼓と三味線、劇的な見得でぴたりと止まる役者、そして上席から弾けるように響くあの電気みたいな掛け声。一緒に参加してもよさそうなくらい、にぎやかに感じます。
でも、そうではありません。エネルギーは本物だけれど、それは客席全員が体で覚えているきっちりした約束事の上で成り立っています。いい知らせは、銀座の歌舞伎座が日本で最も観光客にやさしい伝統的な劇場のひとつだということ。英語ガイド、一幕見のチケット、弁当の売店……だから予備知識ゼロで飛び込んでも十分に楽しめます。ただ、どの一拍が自分のもので、どれが常連のものかを知っておく必要があるだけです。
掛け声はあなたのものではない
一番ありがちなミスが、掛け声を一緒に参加できるスポーツの観客みたいに扱うこと。あの声は大向こうから来ています。多くはクラブに所属するベテランのファンで、劇的なポーズの前後のコンマ数秒の間に役者の屋号を決めるべく、何年も鍛えてきた人たちです。「成田屋!」「音羽屋!」は適当な盛り上げではなく、的確で知識に裏打ちされた敬意の表現。観光客のあなたの役目は、それを聞いて楽しみ、自然な拍手の場面で手を叩くこと。掛け声は、その資格を勝ち取った人たちに任せましょう。
動くのも食べるのも、自分の都合ではなく劇場のスケジュールで
歌舞伎は幕間を軸に組み立てられています。一食まるごと食べられるほど長い休憩で、だからこそ「幕と幕のあいだ」の箱である幕の内弁当が存在するのです。食べるのはそのとき、自分の席かロビーで。場面の合間に動くのも、この休憩のあいだだけにしましょう。幕の最中はじっとしていること。花道という通路が客席のど真ん中を貫いていて、動くシルエットは後ろのみんなにとって台無しの原因になります。時間が足りないなら、一幕見席のチケットで、全プログラムに腰を据えなくても一幕だけ味わえます。
照明が落ちたら、スマホはしまう
最後にスマホ。完全に消音にして、振動音もなしにし、幕の最中はしまっておきましょう。上演中の撮影・録画は禁止されていて、光る画面ひとつでも暗闇では気が散る原因になります。客席や幕は開演前に撮って、あらすじを追うのにスマホへ手を伸ばす代わりに、英語のイヤホンガイドや字幕ガイドを借りましょう。
では幕が上がる前に、この3つのクイックチェックをおさらいしておきましょう。