日本で人を撮るとき、なぜここまで慎重になるのか
日本のプライバシーに関する法律や文化の根っこには、「肖像権」という考え方があります。法律の条文に書かれた権利ではなく、裁判所が認めてきたもので、自分の姿が写った写真の使われ方には本人が口を出せる、というものです。公共の場なら誰でもたいてい撮ってかまわないアメリカなどと違い、日本では知らない人の顔にカメラを向けることをプライバシーの問題と考える人が多くいます。公共の場で無断で撮られた写真をめぐって、裁判所が損害賠償を命じた例もあります。2005年の東京の裁判では、銀座を歩いているところを撮られ、ネットに載せられた女性への賠償が認められました。
文化的には、さらに慎重です。日本では、公共の場で知らない人に注目を向けるのを避けようとする傾向があり、誰かにカメラを向けるのは、相手に真正面から注目を向ける行為です。法律の枠組みとこうした文化的な感覚が合わさって、日本では知らない人を勝手に撮影することが、失礼だと広く受け取られているのです。
覚えておくのはひとことだけ:「すみません、写真いいですか?」 声をかけて、返事を待って、その答えを尊重しましょう。
人物写真を気持ちよく撮るには
- 必ず先に声をかける — カメラを軽く見せて、にっこりして、ひとこと聞きましょう。たいていの人は、うなずいてくれるか、やんわり手を振って断るかのどちらかです。どちらにしても、ほんの数秒で済みます。
- 風景として広く撮るのは大丈夫 — 何人かの人が写っていても、特定の誰かを狙っていない街の風景なら問題ありません。でも、一人の顔をズームで大きく撮るなら、OKをもらってからにしましょう。
- 子どもは絶対に勝手に撮らない — 撮りたいときは親に直接聞きましょう。親が見当たらなければ、その写真はあきらめます。例外はありません。
- 背景もチェックする — 投稿する前に、知らない人がはっきり写り込んでいないか確かめましょう。写っていたら切り取るか、顔をぼかします。たまたまフレームに入っただけの人にも、日本ではプライバシーへの配慮が求められます。
- 断られたらそれで終わり — 食い下がったり、そばで待ったり、もう一度頼んだりはしないこと。気持ちよく引き下がりましょう。
知っておくと役立つこと
- 祇園に掲示されたルール — 京都の花街として有名な祇園には、私道での撮影を禁じる看板が掲げられていて、中には罰金1万円と書いたものもあります(地元の団体に法的に罰金を科す権限はありませんが、伝えたいことははっきりしています)。祇園で芸妓さんや舞妓さんを見かけたら、撮られたくないと思っていると考えましょう。
- 駅での撮影 — 駅の中で建物や案内表示、全体の風景を撮るのは、たいてい問題ありません。ただ、特定の乗客をアップで撮るのはプライバシーの侵害だと広く受け取られています。路線によっては、ほかより厳しい決まりがあることもあります。駅の様子を撮りたいなら引きで撮り、乗客一人ひとりのアップは避けましょう。
- 料理の撮影はたいていOK — 飲食店で自分の料理を撮るのはたいてい問題なく、とてもよく見かけます。ただ、他人の料理を断りなく撮るのはあまりよくないので、先に聞きましょう。店内を広く撮るのも、撮影禁止の掲示がなければたいてい大丈夫です。調理中の料理人を撮るのは微妙なところなので、撮りたいときはひと声かけましょう。
- 神社やお寺の境内 — ほとんどの神社やお寺では、庭園や鳥居、塔、鐘楼、山門など、境内での撮影は歓迎されています。ただしお堂の中は撮影禁止のことが多いので、掲示に従いましょう(お寺での撮影についての記事も参照してください)。僧侶や巫女、職員を無断で撮るのはNGです。背景に人が写り込む程度の引きの写真ならたいてい問題ありませんが、特定の人のアップは、声をかけてからにしましょう。
- 「着飾っている」は撮っていい理由にならない — 着物をレンタルして歩いている観光客は、自分の体験のためにおしゃれをしているのであって、あなたに撮ってもらうためではありません。ルールは同じで、まず声をかけましょう。
クイズで確認
撮影するときの「まず許可を」の感覚を、3問で確かめてみましょう。20秒ほどで終わります。