🙏
食事とマナー
いただきます・ごちそうさま:日本の食事を挟む二つの言葉
食べる前に「いただきます」、食べ終わったら「ごちそうさま」。日本では、この二つの短い感謝の言葉で食事を始めて締めくくります。思ったより簡単ですが、いくつか落とし穴もあります。手を合わせるべきか、一人のときも声に出すのか、そしてごちそうさまを言わずに店を出てしまうという、地味だけれど大きな失敗です。
更新日
誰も声に出していないから、いただきますを省く
NG 静かなのは「ここでは言わないもの」だからだと思い込む
職場の昼休み、コンビニ前のベンチ、気軽なカフェ。席に着いて周りを見回しても、誰も何も言っていません。そこで、日本の大人は実はいただきますなんて言わない、あれは子どもがやるものだ、と結論づけたくなります。でも、それは少し違います。声には出さなくても、**小声で言ったり、ひと呼吸の間を取ったりしている人はたくさんいます。** よく見ていると、軽く頭を下げたり、箸を料理の上で一瞬止めたり、声は出さずに口だけ動かしたりしているのに気づくかもしれません。この一瞬の間をまったく取らずに、おにぎりをつかんでいきなりかぶりつくと、雑な印象になります。同僚やホストファミリーの前ではなおさらです。
OK 声は小さくても、ひと呼吸の間は取る
目安は、**その場の声の大きさに合わせる**ことです。コンビニのベンチや自分のデスクで一人で食べるなら、声に出さずに、または小声で「いただきます」と言って軽く頭を下げれば十分です。誰かと一緒に食べるとき、特にホストファミリーや料理を作ってくれた同僚がいるときは、聞こえる声で言いましょう。箸を取る前に、はっきり一度「いただきます」と言って軽くうなずきます。小学生は学校の給食でみんな声をそろえて言います(多くの人はそこで覚えます)が、大人になると静かに済ませることもよくあります。🙏
アメリカ式の食前の祈りのように、大げさに合掌する
NG 目を閉じて手を固く合わせ、数秒間そのままじっとしている
今度は逆の失敗です。いただきますは仏教の感謝の心と結びついていると読んで、張り切って本格的にやってしまうパターン。胸の前で手をぎゅっと合わせ、目を閉じ、周りがもう食べ始めているのにその姿勢を崩さない。この所作は日本語で**合掌**といい、手を合わせる所作はたしかに仏教に由来します(「いただきます」という言葉そのものは、「つつしんで受け取る」という意味の「いただく」から来ています)。ただ、現代の日常ではもっと軽くて短いものです。手のひらを一瞬合わせるか、指先を軽く触れ合わせる程度で、祈りの姿勢をじっと保つものではありません。手は合わせずに、軽く頭を下げるだけの大人もたくさんいます。大げさな祈りは、日本の習慣になじんでいるというより、日本らしさを演じているように見えてしまいます。
OK 合掌は軽く短く。手を合わせなくてもかまわない
手を合わせるなら、胸の前で手のひらを一瞬合わせ、軽くうなずいて「いただきます」と言い、箸を取ります。かかる時間は1秒ほど。祈りというより、丁寧な会釈に近いものです。周りに手を合わせている人がいなければ、または一人で食べているなら、言葉と軽い会釈だけで十分で、手は要りません。**手を合わせるかどうかは自由、でもひと呼吸の間は省かない。** 毎回手を合わせる人もいれば、まったくしない人もいます。
食べ終わって、ごちそうさまを言わずに出ていく
NG 会計を済ませたら、黙って席を立って店を出る
お金を払うお店ならごちそうさまは要らない、と考える旅行者もいます。お金を払い、お店はそれを受け取ったのだから、取引は終わりというわけです。ここは、日本と欧米の食事の感覚がはっきり違うところです。**「ごちそうさま」、丁寧に言えば「ごちそうさまでした」は、食事を締めくくる言葉です。** 自分で払っても、上司が払ってくれても、ホストファミリーが作ってくれても、それは変わりません。小さなラーメン屋やそば屋のカウンターでは、お客さんがレジに向かいながら厨房に声をかけるのはごく普通の光景です。ホストファミリーの食卓でごちそうさまを言わずに席を立つのは、家族の夕食から何も言わずに抜けるのと同じです。お金で払えるのはお勘定まで。人と人とのやりとりを締めくくるのが、ごちそうさまなのです。
OK ごちそうさまを言う。作ってくれた人やおごってくれた人がいるなら、はっきりと
食べ終わったら、箸を箸置きに置き、軽くうなずいて「ごちそうさまでした」と言います。過去形の「でした」をつけるのが丁寧な形です。気軽なお店で一人なら、お金を渡すときに小声で「ごちそうさま」と言えば十分です。カウンターのラーメン屋なら、帰りがけに厨房に向かって声をかけましょう。たいてい「ありがとうございました」と返ってきます。ホストファミリーの家や、同僚におごってもらったときは、食卓ではっきり言い、別れ際にもう一度言います。**ごちそうさまを言い忘れるのはよくある失敗**ですが、簡単に直せる失敗でもあります。
使うタイミングを間違える、発音が崩れる
NG 食事以外のお礼に使う、または音が崩れる
ここには落とし穴が二つあります。一つ目は**タイミング**。ごちそうさまは食事に結びついた言葉で、食べ終わった直後や、誰かがおごってくれたり作ってくれたりした直後に言います(翌日なら「昨日はごちそうさまでした」が自然なお礼です)。ただし、食べ物以外の贈り物へのお礼には使えません。二つ目は**発音**です。**ご・ち・そう・さ・ま**となめらかに5拍で言います(「そう」は「ソー」と伸ばす音です)。よくある言い間違いは「ごちさま」「ごちぞうさま」、それに「ごち」で止めてしまうこと(これはくだけた言い方で、丁寧ではありません)。いただきますも同じで、**い・た・だ・き・ま・す**。最後の「す」はほとんど声になりません。「いただきまス」と軽く言うのは自然ですが、「いたきます」では一音抜けています。
OK タイミングも、発音も、丁寧さも正しく
いただきますは**最初のひと口の直前**、ごちそうさま(でした)は**最後のひと口のすぐあとか、支払いのすぐあと**に言います。後日あらためておごってもらったお礼を言いたいときは、「昨日はごちそうさまでした」という形にすれば、ぴったりはまります。練習するなら、いただきますは *い-た-だ-き-ま-す*、ごちそうさまでしたは *ご-ち-そー-さ-ま-でし-た* と区切って言ってみてください。🍱 ほかのことを全部忘れても、帰りがけにはっきり「ごちそうさま」と言えれば、たいていの場面は乗り切れます。
二つの言葉を10秒で
- いただきます — 食べる前に言います。文字どおりの意味は「つつしんでいただく」。農家の人から料理を作った人、食材そのものまで、その食事が食卓に届くまでに関わったすべてに感謝する言葉です。
- ごちそうさまでした — 食べたあとに言います。文字どおりの意味は「ごちそうでした」。「馳走」という漢字は、もともと材料を集めるために走り回る様子を表していました。料理そのものだけでなく、その手間に対してお礼を言っているのです。
この二つは、日本の食事の始まりと終わりを区切る言葉です。どちらかを省くと、周りの人には食事がきちんと終わっていないように感じられることがあります。
どちらをいつ言うか — 早見表
| 場面 | いただきます | ごちそうさま |
|---|
| ホストファミリーとの夕食 | みんなで声に出して | 声に出して、軽く頭を下げて |
| 会食・接待 | 主催者が言うのを待ってから | 最後にはっきりと |
| 職場の昼食 | 小声で、または心の中で | 片づけながら静かに |
| コンビニのベンチで一人 | 心の中で間を取れば十分 | 声に出さなくてもよい |
| ラーメン・そばのカウンター | 自分に向けて小声で | 帰りがけに厨房へ声をかける |
| 学校の給食 | みんなで大きな声で | みんなで大きな声で |
手を合わせるかどうか、の答え
手のひらを合わせる合掌は昔からの所作で、この所作に仏教的な由来があるのも事実です。ただ、2026年の日本では、合掌は必須ではなく、してもしなくてもよいものになっています。しない大人もたくさんいれば、毎回する人もいます。学校の給食で手を合わせる小学生も多くいます。目を閉じて本格的な祈りの姿勢をとる旅行者は、何かの芝居をしているように見えてしまいます。指先を軽く合わせて、さっとうなずいて、それでおしまい。どこでも浮かないのはこのやり方です。
クイズで確認
ひと呼吸の間、手の合わせ方、締めの言葉を3問で確かめましょう。
-
Q1 いただきますを言うときは、毎回必ず手を合わせないといけない?
手を合わせるかどうかは自由です。特に気軽な場面や一人の食事では、手を合わせない大人もたくさんいます。いつも変わらないのは、ひと呼吸の間と言葉そのもの。手を合わせるかどうかはお好みでかまいません。
-
Q2 お店の人と一緒に食べているわけではない普通の飲食店でも、ごちそうさまは言うべき?
はい。ごちそうさまは、誰が払ったかに関係なく食事を締めくくる言葉です。小さなラーメン屋やそば屋では、お客さんが帰りがけに厨房へ声をかけるのはごく普通のこと。黙って店を出てしまうのは、旅行者がしがちな失敗です。
-
Q3 コンビニのベンチで一人で食べるとき、いただきますを声に出すのは変?
変ではありませんが、一人のときは声に出さないか、小声で言う人が多いです。静かにいただきますと言って軽く頭を下げるのはごく普通のことで、大きな声で言っても失礼ではなく、少し珍しいだけです。