日本酒の出し方 — 温度とお酌の作法

日本酒は種類によって、熱燗、ぬる燗、冷酒と飲み方が変わります。お酌は自分の杯より人の杯にするのが基本。最初の一杯の前に、徳利とお猪口の作法を押さえておきましょう。

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なんでも「熱燗で」と頼む

観光客が居酒屋のカウンターで日本酒メニューを指差して「熱く」というジェスチャーをしており、バーテンダーがプレミアム吟醸のボトルを持って少し躊躇している
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酒の種類も確かめずに、熱燗を頼む

「熱燗」という言葉を知っているので、何を頼むときも「熱燗で」と注文してしまう。ところが、吟醸や大吟醸のような高級な日本酒は、たいてい冷やすか常温で出されます。強く温めると、そのお酒の値打ちである繊細な花や果物のような香りが立ちにくくなるからです。いい大吟醸を熱燗で頼むのは、上等なワインをわざわざ煮立てて飲むようなもの。お店はたぶん出してくれますが、せっかくの良さが失われてしまいます。

笑顔の居酒屋のスタッフが観光客に各ボトルの横に温度アイコンが書かれた日本酒メニューを見せており、観光客が納得して考えている
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そのお酒に合う温度をお店の人に聞く

注文するときに、そのお酒は何度くらいで飲むのがおすすめか、お店の人に聞いてみましょう。メニューの銘柄の横に、おすすめの温度が書いてあることもあります。目安としては、吟醸や大吟醸は冷酒(れいしゅ)か常温(じょうおん)がいちばんおいしく、普通酒や本醸造はぬる燗や熱燗にするとおいしくなります。おすすめに従っておけば間違いありません。注いでくれる人は、きっとそのお酒をよく知っています。

徳利から自分のお猪口に注ぐ

日本のレストランのテーブルで一人が陶器の徳利を持って自分の小さなお猪口に日本酒を注いでいる
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連れがいるのに、自分のお猪口に自分で注ぐ

お猪口(小さな杯)が空になり、目の前には徳利(陶器の酒器)がある。そこで徳利を取って、自分の杯に注いでしまう。日本では、ビールなど多くのみんなで飲むお酒と同じように、日本酒もお互いに注ぎ合うのが昔からの習わしです。連れがいるのに自分で注ぐと、「この席では誰も自分に気を配ってくれない」と言っているように見えることがあります。お酌という習慣が本来つくりたい雰囲気とは正反対です。

居酒屋のテーブルで二人の友人が、一人が徳利から持ち上げられたお猪口に丁寧に日本酒を注いでおり、両者が温かく微笑んでいる
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連れの杯に注げば、注ぎ返してもらえる

徳利を片手で持ち、もう片方の手で底を支えて、相手のお猪口に8分目くらいまで注ぎます。縁いっぱいまでは注ぎません。すると、たいてい相手もほどなく注ぎ返してくれます。自分の杯が空なのに誰も気づかないときは、もう一度みんなに注いで回りましょう。たいてい誰かが徳利を手に取って、注ぎ返してくれます。お互いに注ぎ合うこの流れは、一度なじんでしまえばとても心地よいものです。

空の徳利を前に、どうしていいかわからない

観光客が居酒屋のカウンターで空の陶器の徳利を逆さまにして呆然と持ち、周囲にスタッフを探しながら困惑している
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空になった徳利を前に、おかわりの頼み方がわからない

徳利が空になりました。もう一本頼むものなのか、日本酒は瓶ごと出てくるものなのか、お店の人を呼んでも気まずくないのか、よくわかりません。それで、空の徳利を前に座ったままでいたり、通りかかった店員さんに曖昧に手を振って、察してくれるのを期待したり。そうしているうちに、場の流れが止まってしまいます。

観光客がカウンターで明るく手を上げて空の徳利を指差しながらスタッフを呼んでおり、スタッフが笑顔でうなずいている
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「すみません」と声をかけて、もう一本頼む

店員さんと目が合ったら、明るく「すみません!」と声をかけ、徳利を指さしましょう。「日本酒、もう一本」や「これ、もうひとつ」と言えば伝わります。日本酒は徳利(一合、約180mlのことが多い)か、グラス(量はお店によって違い、徳利より少なめ)で頼めるお店が多いので、同じものをもう一本頼んでもいいですし、次はグラスで別の銘柄を試してみるのもいいでしょう。いろいろな種類を飲み比べるのも、楽しみの半分です。

器の使い方がわからない

観光客がバーのカウンターで正方形の木の枡に入ったあふれる日本酒のグラスを不思議そうに見ており、どうするかわからない様子
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お猪口や枡、あふれるほど注がれたグラスを前に戸惑う

日本酒が運ばれてきたら、思っていたワイングラスではなく、小さな陶器の杯だったり、小さな木の箱だったり、木の箱にグラスが入っていて、そこにわざとお酒があふれるほど注がれていたりします。箱から飲むのか、グラスから飲むのか、両方なのか、どちらでもないのか。そもそも、あふれているのは手違いなのか、喜ぶべきことなのかもわかりません。

居酒屋のカウンターで幸せそうな食事客が木の枡の中のグラスから日本酒を取り上げており、枡にはあふれた分のお酒が残っており、温かい笑顔
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出された器でそのまま飲む。あふれた分も楽しむ

お猪口(小さな陶器の杯)は、小さなショットグラスのように飲み、徳利から注ぎ足します。枡(四角い木の箱)は、どの角から飲んでもかまいません。木のほのかな香りがお酒に移ります。枡の中のグラスにあふれるほど注ぐ「もっきり」は、お店の気前のよさの表れです。まずグラスから飲み、枡にたまった分はグラスに戻すか、枡から直接飲みます。決まった正解はないので、気楽に味わってください。

日本酒をざっくり解説

日本酒(英語で「sake」と呼ばれますが、日本語の「さけ」はお酒全般を指すので、正確には「にほんしゅ」)は、米、水、麹、酵母から造られます。見た目はウォッカのようですが、性質はむしろワインやビールに近いお酒です。蒸留酒ではなく醸造酒で、アルコール度数はたいてい15〜16%ほど。たいていのワインより少し強いものの、蒸留酒にはとても及びません。魚や貝、豆腐をはじめ、和食のほぼすべてによく合います。「よくわからないアジアのお酒」ではなく、「独自の伝統を持つ、米から造るワイン」と考えると、注ぎ方や飲み方の習慣の多くがすっと腑に落ちます。

注文する前に知っておきたいのが、日本酒の種類です。大まかには、普通酒 → 本醸造 → 純米 → 吟醸 → 大吟醸と上がっていきます。本醸造には醸造アルコールが少し加えられていて、純米には加えられていません。吟醸と大吟醸は、米をどこまで磨いたか(精米歩合)で決まり、吟醸は元の米の60%以下、大吟醸は50%以下まで磨いています。普通酒は日常的に飲むお酒で、温めて出されることもよくあります。純米は米だけで造ったお酒で、ふくよかでまろやかな味わいのものが多いです。吟醸と大吟醸は高級酒で、軽やかで香りが華やか。その繊細な香りを守るため、たいてい冷やして出されます。全部覚える必要はありませんが、こうした段階があると知っているだけでも、その場に合ったお酒を選びやすくなります。

そして温度。これは日本酒の楽しみの中でも、いちばん面白いところかもしれません。同じお酒でも、冷酒(れいしゅ)、常温(じょうおん)、少し温めたぬる燗(約40℃)、しっかり温めた熱燗(約50℃)と、温度を変えて楽しめます。燗酒は安く済ませるための飲み方ではなく、まったく別の味わいです。やわらかくまろやかになり、寒い夜にしっかりした料理と合わせると格別です。高級酒は香りを守るために冷やしたまま、素朴なお酒は温めると味わいが開きます。徳利とお猪口でお互いに注ぎ合いながら、約180mlのことが多い徳利をゆっくり空けていく。この作法は、決して多くはないお酒で、長く温かい夜を過ごせるようにできています。乗ってみれば、堅苦しいルールではなく、世界でもいちばん心地よいお酒の飲み方のひとつに感じられるはずです。

まとめると、お酌は人にする、温度はお店の人に聞く、おかわりは「すみません、もう一本」。

知っておくと役立つこと

  • あとから効いてくる — 日本酒の度数はたいてい15〜16%ほどで、たいていのワインより少し高めです。そのうえ、おかわりがすぐに注がれ、お猪口が小さいので、何杯飲んだかわからなくなりがちです。徳利1〜2本でも、同じ量のワインより早く酔いが回ることがあります。ペースを守り、水も一緒に飲みましょう。
  • 「にほんしゅ」と「さけ」 — 日本語の「さけ」はお酒全般を指すので、日本の米のお酒をはっきり指したいなら「にほんしゅ」と言います。「さけ」で注文してもたいてい通じますが、正確なのは「にほんしゅ」です。
  • 産地ごとに飲み比べる — 日本酒のメニューを新潟、秋田、広島などの産地別に並べている居酒屋もあり、産地ごとに味の個性があります。興味があれば、「〇〇県のお酒でおすすめは?」と聞いてみましょう。ちょっとした利き酒の旅のような夜になります。
  • 焼酎は日本酒とは別物 — 焼酎は見た目は似ていますが、蒸留酒(度数は25%前後が一般的)で、お湯割り、水割り、ロックなどで飲まれます。飲み方も作法も別物なので、焼酎を頼んで日本酒が出てくることも、その逆もありません。
  • 料理と合わせやすい — 日本酒は、とても料理に合わせやすいお酒です。刺身、焼き魚、天ぷら、豆腐料理、焼き鳥など、和食ならたいていのものによく合うので、あまり悩まずに注文して大丈夫です。

クイズで確認

日本酒の作法が身についたか、3問で確かめてみましょう。20秒ほどで終わります。

Quick check

Can you spot the right move?

  1. Q1 高級な吟醸酒を熱燗で頼むのは、基本的には間違い?

  2. Q2 日本酒は自分の杯だけでなく、連れの杯にも注ぐべき?

  3. Q3 「もっきり」(枡の中に置いたグラスに、わざとあふれるほど日本酒を注ぐ出し方)は、お店の気前のよさの表れ?