法律の問題ではなく、「内」と「外」の境目の話
この記事で取り上げることは、どれも法律違反ではありません。電車でメイクをしても法律違反ではなく、罰金を取られることもありません。問題になっているのは、日本人が**内(うち)と外(そと)**と呼ぶ、文化的な境目です。身支度は「内」でやること。自分の家、プライベートな空間に属するものです。一方、電車の車内はこれ以上ないほどの「外」です。スマホの画面が見えるほどの距離に知らない人が立っている、閉ざされた箱なのですから。
ですから、電車でコンパクトを開いたり、髪をとかしたり、爪を切ったりするのは、ルール違反というより、プライベートな行為をみんなの空間に持ち込んでいることになります。口に出して注意する人はいなくても、周りの人が「なんだか違う」と感じるのはそこです。
公園のベンチより、電車のほうが気になる理由
電車の車内では、あらゆることが濃縮されます。狭いので、パウダーは隣の人に舞い、髪は隣の人の膝に落ちます。閉ざされた空間に人がぎっしりいるので、強い香水は全員の問題になります。そして静かなので、爪切りのパチンという音や電動シェーバーのブーンという音が車内に響きわたります。そこに電車の揺れが加われば、マスカラのブラシが誰かの袖のすぐそばに来てしまいます。
鉄道会社もこの問題を取り上げてきました。東急の2016年のマナー広告(駅や車内のポスターと動画)には電車内化粧を取り上げたものがあり、話題になりました。鉄道会社が広告で取り上げるということは、それだけ広く知られた行為だということです。
実際のところ
電車内化粧は、誰からも嫌われているわけではありません。若い世代のほうがやや寛容な傾向はありますが、それでもマナー違反だと考える人が多数です。リップをさっと直すくらいならほとんど目立ちませんし、はみ出た髪を耳にかけるのも同じです。本当に失礼に映るのは、ひと通りの身支度をやってしまうことです。コンパクトを開いてマスカラを塗る、髪をしっかりとかす、爪を切る、香水の香りを振りまく。周りの人が心の中で「支度が終わらないまま出てきたんだな」と思うのは、こうした行動です。
クイズで確認
日本の電車での身づくろい、どこまでがOKか3問で確かめてみましょう。